
「お耳に入れておきたい」は、「前もって知らせておきたい」という意味です。
上司や取引先にも使える丁寧な前置きであり、この表現自体が失礼に当たるわけではありません。
ただし、「お耳に入れておきたいです」だけで終えるより、「お耳に入れておきたいことがございます」と続けるほうが自然です。
前置きのすぐ後ろに事実を置き、相手に対応してほしいかどうかまで伝えると、丁寧で分かりやすい報告になります。
急ぎの連絡では、この前置きを使わず、要件を最初に伝えましょう。
意味、相手別の使い分け、7つの例文、言い換え、避けたい場面を順番に見ていきます。
お耳に入れておきたいは前もって知らせたいという意味

「お耳に入れておきたい」を理解するには、「耳に入れる」と「耳に入る」を分けて考えると分かりやすくなります。
言葉の種類を難しく覚えるよりも、誰が知らせ、誰が知るのかを押さえておきましょう。
耳に入れると耳に入るでは立場が変わる
「耳に入れる」には、情報を知らせるという意味があります。
「この件を部長の耳に入れる」なら、話し手側が部長へ知らせます。
一方、「耳に入る」は、情報が自然に伝わってきて知るという意味です。
「その話が私の耳に入った」なら、私は情報を受け取った側です。
自分が伝えるなら「耳に入れる」、情報が伝わってきたなら「耳に入る」と覚えると迷いにくくなります。
敬意は言葉一つではなく文全体で表す
「お耳」とすることで、情報を受け取る相手への敬意が添えられます。
自分から相手へ知らせる場面で使うため、控えめに話を切り出したい気持ちも表せます。
ただし、「お」を付けただけで、どの相手にも十分な敬語になるわけではありません。
後ろに「ことがございます」「ご報告いたします」などを続け、要件も分かりやすく伝えることで、文全体の丁寧さが整います。
敬語の名前を一つに決めつけるより、相手を立てつつ、自分が知らせる文として自然に完成しているかを見るほうが実用的です。
自然な基本形はお耳に入れておきたいことがございます
迷ったときは、「お耳に入れておきたいことがございます」を基本形にできます。
その直後に、何があったのかを一文で続けましょう。
「お耳に入れておきたいです」も意味は通じますが、「私は知らせたい」という希望で文が止まり、用件が見えにくく感じられる場合があります。
「ことがございます」と名詞を続けると、相手に向けた自然な切り出しになります。
少しやわらかくしたいときは、「念のため、お耳に入れておきたいことがございます」と始めてもよいでしょう。
相手と場面に合わせれば目上の人にも使える

丁寧な表現でも、相手や情報の重さによっては、短い言い方のほうが伝わります。
まずは、自分の場面に近いものを確認してみましょう。
| 相手・場面 | 使いやすさ | 伝え方のポイント |
|---|---|---|
| 上司への事前共有 | 使いやすい | 判断前に知ってほしい事実を続ける |
| 取引先への連絡 | 内容による | 前置きを長くせず要件をすぐ示す |
| 同僚への日常連絡 | やや改まった印象 | 「共有します」でも十分なことが多い |
| 急ぎの変更や停止 | 向かない | 要件と期限を最初に伝える |
上司には判断前の事前共有で使いやすい
上司へ、正式な報告になる前の動きを早めに知らせたいときに使いやすい表現です。
たとえば、取引先から追加の希望が出たものの、まだ予定が確定していない場面が合います。
事実を伝えた後に、「現時点で対応は不要です」または「進め方をご相談できますか」と添えると、上司は次に何をすればよいか判断できます。
取引先には何を伝えるかをすぐ続ける
取引先にも使えますが、前置きが長いと、肝心の用件が見えにくくなります。
「お耳に入れておきたいことがございます。納品予定について一点変更がございます」のように、内容をすぐ後ろに置きましょう。
正式に決まった変更なら、「納品予定の変更についてご報告いたします」と直接伝えるほうが合います。
同僚には共有しますのほうが自然なこともある
同僚への普段の連絡では、「念のため共有します」のほうがすっきり伝わることがあります。
「お耳に入れておきたい」は少し改まった響きがあるため、親しい相手には距離を感じさせるかもしれません。
丁寧な言葉を重ねることより、関係に合う温度で話すことを優先しましょう。
7つの例文から自然な使い方をつかむ

「お耳に入れておきたい」の後ろに事実を続け、必要なら対応の要否を添えるのが基本です。
自分の場面に近い例文の名詞や日時を入れ替えて使ってくださいね。
上司へ気になる動きを事前に伝える例文
例文1:会議の参加者が増えそうなとき
「お耳に入れておきたいことがございます。来週の会議は、先方の参加者が二名増える見込みです」
まだ確定していないため、「見込みです」と範囲を示しています。
例文2:判断前に追加の希望を知らせるとき
「ご判断の前に、お耳に入れておきたい点がございます。先方から、資料の追加を希望するご連絡がありました」
上司が判断する前に知る必要がある理由も伝わります。
例文3:対応が不要な情報を先に共有するとき
「念のためお耳に入れておきたく、ご連絡しました。確認の問い合わせが一件ありましたが、現時点ではご対応は不要です」
対応が不要だと添えることで、相手を迷わせません。
予定変更や進行状況を伝える例文
例文4:翌日の場所が変わったとき
「お耳に入れておきたいことがございます。明日の打ち合わせは、第三会議室へ変更になりました」
すでに決まった変更は、「変更になりました」とはっきり述べます。
例文5:作業に時間がかかっているとき
「進行について、お耳に入れておきたい点がございます。確認作業に予定より時間がかかっており、完了は明日の午前になる見込みです」
遅れだけでなく、新しい見込みも伝えると状況を判断しやすくなります。
取引先と同僚へ伝える例文
例文6:取引先へ担当変更を事前に伝えるとき
「事前にお耳に入れておきたいことがございます。当日は弊社の担当者が一名変更になりますが、進行内容に変更はございません」
相手が気にしそうな点まで先に補っています。
例文7:同僚へ可能性を共有するとき
「念のため共有します。午後の予定が変わる可能性があるため、決まり次第もう一度連絡します」
同僚には改まった表現を無理に使わず、短い言い換えにしています。
言い換えは伝える目的と情報の重さで選ぶ

言い換えは、丁寧さを足すためではなく、伝える目的をはっきりさせるために使います。
どれが最もかしこまっているかではなく、相手に何を受け取ってほしいかで選びましょう。
正式な経過や結果ならご報告いたします
決まったことや結果を正式に伝えるなら、「ご報告いたします」が分かりやすい表現です。
「会議日程の変更についてご報告いたします」のように、報告する内容も一緒に書けます。
記録に残すメールや、結果を伝える連絡に向いています。
同じ情報を持ってほしいなら共有いたします
複数の人に同じ内容を知ってほしいときは、「共有いたします」が目的に合います。
「現時点の進行状況を共有いたします」とすれば、まだ結論が出ていない途中経過にも使えます。
親しい同僚なら、「念のため共有します」でも十分です。
念押しや案内なら念のためお知らせいたします
相手がすでに知っている可能性があるときは、「念のためお知らせいたします」とするとやわらかく伝えられます。
「重ねてのご案内となりますが」と続ける方法もあります。
相手の確認や返答が必要なら、「ご確認いただけますでしょうか」とお願いを明確にしましょう。
遠回しにしないほうがよい場面もある

きれいな敬語より、情報の正確さと届く速さを優先したい場面があります。
前置きが必要か迷ったら、相手がすぐ動く必要があるかを考えてみましょう。
急ぎの連絡は最初に要件を伝える
開始時刻の変更や作業の一時停止など、すぐ対応してほしい内容は、最初に要件を伝えます。
「至急ご確認をお願いいたします。本日の開始時刻が10時から9時30分へ変更になりました」のように、期限や変更点を先に見せましょう。
遠回しな前置きによって対応が遅れそうなときは、「お耳に入れておきたい」を使わない判断も大切です。
未確認の話は事実と推測を分ける
確認できていない話を伝えるときは、確かめられた事実と、まだ分からない部分を分けます。
「先方から日程を見直したいとの連絡がありました。新しい日程は確認中です」と書けば、現在地が伝わります。
人の評価に関わる話や広める必要のない内容は、言い方を考える前に、本当に共有する必要があるかを確認しましょう。
伝える必要がある場合も、誰から聞いたか、どこまで確認したか、次に何を確かめるかを分けて説明します。
お耳に入れておいてくださいは依頼として整える
「お耳に入れておいてください」は、相手に情報を覚えておくよう求める響きがあります。
単に知らせるだけなら「念のためお知らせします」、確認が必要なら「ご確認いただけますか」と目的を言い分けましょう。
今後の判断で覚えておいてほしいなら、「今後変更になる可能性がありますので、お含みおきいただけますと幸いです」と伝える方法もあります。
メールと会話では前置きの長さを変える

読み返せるメールと、その場で聞く会話では、同じ内容でも伝わり方が違います。
メールは一目で用件が分かること、会話は相手が聞ける状態かを確認することが大切です。
メールは件名と冒頭で用件を見えるようにする
件名は「【共有】来週の会議室変更について」のように、内容が分かる形にします。
「お耳に入れておきたい件」のような件名では、開くまで内容が分かりません。
本文は「お耳に入れておきたいことがございます」の直後に事実を書き、最後に返信や確認が必要かを添えます。
会話では時間を確認して短く切り出す
「今、2分ほどよろしいでしょうか。お耳に入れておきたいことがございます」と切り出すと、相手も話を聞く準備ができます。
相手が忙しそうなら、「お手すきの際に、2分ほどお時間をいただけますか」と予定を合わせてもよいでしょう。
前置きの後は、背景を長く説明せず、起きたことを一文で伝えます。
伝えた後に対応が必要かを添える
情報だけ受け取ってほしいなら、「現時点でご対応は不要です」と添えます。
確認してほしいなら、「本日中にご確認いただけますでしょうか」と期限を含めます。
相談したいなら、「進め方についてご相談してもよろしいでしょうか」と目的を明らかにします。
以前、上司への口頭報告で「お耳に入れておきたいことがございます」と前置きしたところ、落ち着いて話を聞いてもらえました。
一方、会議室の急な変更では「会議室が変更になりました」と先に伝えたほうが、すぐに動いてもらえました。
丁寧な前置きが合う場面と、要件を先にしたほうがよい場面は、急ぎかどうかで分けています。
迷ったときは3つの確認で言葉を選ぶ

相手、緊急性、求める行動の3つを確認すると、言葉を選びやすくなります。
次の順番で、自分の文を短く組み立ててみましょう。
- 誰に、何を知ってほしいのか
- 今すぐ対応してほしいのか
- 確認、返信、相談のどれが必要なのか
誰に何を知ってほしいかを一文にする
「上司に、来週の変更を、判断前に知ってほしい」のように整理します。
それを「ご判断の前に、お耳に入れておきたい点がございます」と前置きし、変更内容へつなげます。
前置き、事実、対応の要否という3つの順番にすると、丁寧さと分かりやすさを両立できます。
今すぐの行動が必要なら要件を先にする
すぐ動いてほしいなら、「お耳に入れておきたい」より具体的な要件を優先します。
「本日の会議室が変更になりました。第三会議室へお越しください」とすれば、必要な行動がすぐ分かります。
丁寧さは、「お願いいたします」など文末でも十分に表せます。
迷うなら短く具体的な言い換えを使う
「ご報告します」「共有します」「お知らせします」のどれかを選べば、多くの場面で自然に伝わります。
正式な結果なら「ご報告」、途中の情報なら「共有」、予定や案内なら「お知らせ」と考えると選びやすいでしょう。
言葉を飾るより、内容が正確に伝わることを優先してくださいね。
まとめ

この記事のポイントをまとめます。
- 「お耳に入れておきたい」は前もって知らせたいという意味
- この表現自体が失礼に当たるわけではない
- 「耳に入れる」と「耳に入る」では知らせる側が異なる
- 基本形は「お耳に入れておきたいことがございます」
- 前置きの直後に事実を続ける
- 上司には判断前の事前共有で使いやすい
- 取引先には回りくどくならないようにする
- 急ぎの連絡は要件と必要な行動を先に伝える
- 未確認情報は事実と分からない部分を分ける
- 迷うなら「ご報告」「共有」「お知らせ」を目的で選ぶ
「お耳に入れておきたい」は、相手を立てながら、事前に情報を伝えたいときに役立つ言葉です。
難しい敬語を重ねることより、何があり、相手に何をしてほしいかを分かりやすく続けることが大切です。
急ぎでなければ「お耳に入れておきたいことがございます」、急ぎなら要件を先にする、と分けるだけでも迷いは減ります。
相手と場面に合う一言を選べば、落ち着いて感じのよい報告ができますよ。