「リクガメにお風呂?」と聞くと、ちょっとびっくりする方も多いと思います。
私も最初はそうでした。
ところが実際にやってみると…あら不思議。
甲羅はツヤっと、リクガメ本人(本亀?)もどこか気持ちよさそう。
とはいえ「本当に必要なの?」「毎日やるべき?」と迷う飼い主さんも多いはず。
そこで今回は、温浴の必要性や効果、正しい方法や注意点まで、小雪メルマガ調の軽やかなテンポで、でも中身はしっかり深堀りしてお届けします。
リクガメの温浴はなぜ必要なの?
温浴が支える3つの健康軸
温浴には、体の外と中のコンディションを整える役割があります。
ひとつ目は排泄のサポートです。
ぬるめの水に浸かることで腸の動きがゆるやかに刺激され、固くなりがちな便や白く固い尿酸を出しやすくなります。
ふたつ目は水分補給。
口からの給水が少ない個体でも、総排泄腔(いわゆる“お尻”のあたり)からの吸水と、入浴中の自然な飲水で体内の水分バランスが整います。
みっつ目は保湿と清潔。
乾燥しやすい室内では皮膚や甲羅のひび割れ、脱皮殻の残りが起こりやすいのですが、温浴後にやさしく拭うことで余分な汚れが落ち、トラブルの芽を摘めます。
野生と飼育環境の“ギャップ”を埋める
野外のリクガメは、朝露を舐めたり浅い水たまりに寄ったり、身体のほてりを土や湿った落ち葉で調整したりしています。
ところが私たちの家は、空調でカラッと快適。
人間には天国でも、カメには“乾燥した箱”になりがちです。
温浴は、この環境差を埋めるためのやさしいブリッジ。
毎日ではなくても、定期的に取り入れることで「自然界でしていること」を安全に再現できます。
温浴をしないとどうなる?リスクと“もったいない”
便秘・脱水のスパイラルにハマりやすい
水分が足りないと、便は固く・出にくくなります。
「出にくいから食欲も落ちる。」
「食べないからまた出ない。」
そんな悪循環は、実は小型種や子ガメで起こりがち。
温浴はこの輪をやさしく断ち切ります。
入浴中にコロッと出る日は、飼い主のこちらもガッツポーズです。
乾燥が積み重なると皮膚トラブルに
甲羅や皮膚は“ゆっくり変化する”部位。
だからこそ、乾燥の小さな積み重ねが数週間後に線状のひびや、脱皮殻の残りとして表れます。
温浴だけで魔法のように直るわけではないけれど、予防としてはとても優秀。
私は「なんとなく粉っぽいな」と感じたら、いつもの頻度に+1回だけ臨時で温浴を足すようにしています。
翌朝のしっとり感が全然違うんですよね。
正しい温浴のやり方“気持ちいい”を科学する
水温・深さ・時間のゴールデン3点セット
水温は人の手で“ぬるい”と感じる30~35℃を目安にします。
熱すぎると体力を奪い、冷たすぎると体温を下げます。
深さは腹甲が沈みきらず、つま先が床をとらえられる浅さにします。
私は洗面器の底にすべり止めのキッチンマットを敷いて、指先がズルッと滑らないようにしています。
時間は10~15分が基準。
子ガメや初回は5分から始めて、様子を見ながら延ばすと安心です。
頻度は“年齢×環境×個性”で決める
子ガメは脱水・便秘になりやすいので、毎日~週3回の範囲で。
成体は週1~2回が多くのご家庭でちょうどよい印象です。
乾燥が強い真冬の室内や、食欲が落ち気味の時期は頻度を少しだけ上げる。
梅雨や高湿度の部屋では下げる。
そんな“引き算・足し算”を、体重計と食欲のメモを頼りに調整していきましょう。
ステップ・バイ・ステップで実践
私はいつも、準備→導入→入浴→アフターケアの順で進めます。
まずはデジタル温度計で水温を作り、タイマーを手元に置く。
抱き上げる前に手を温め、腹側を支えながらそっと入れて、最初の1分は私の指を軽く甲羅に添えて安心させます。
途中で水が冷めたら、同温の差し湯を側面からゆっくり足します。
入浴中は顔を上げて飲む仕草がないか観察します。
飲んだら「よしよし」と心の中で拍手。
時間が来たらタオルで包み、甲羅の隙間の水分も押さえるようにして拭き、最後は保温の効いたケージへ“直行直帰”。
ここで寄り道して室温差に当ててしまうと、せっかくの温浴が台無しなので要注意です。
嫌がる・暴れる“あるある”をやさしく解決
最初は多くの子が、足で水をかいてバシャバシャやります。
浅さが合っていないか、温度が落ちているサインかもしれません。
私は2センチほど浅くして、背中に手を添え「大丈夫だよー」と声をかけます(通じるのかは謎、でも落ち着く)。
水面に葉っぱを一枚浮かべると、気がそれて飲み始める子もいます。
どうしても苦手そうなら、その日は足湯だけにして切り上げるのも“勇気ある撤退”。
次回は短時間からリトライします。
温浴の注意点!失敗しがちなポイントを先回り
長風呂はご法度、入浴剤は不要
「気持ちよさそう=長く」が通用しないのが動物ケア。
長湯は体力を奪います。
15分を越える場合は、目的を“飲水”と“排泄”に絞って切り上げましょう。
入浴剤や油分のある石けんは不要です。
匂いの強い洗剤は呼吸器にもストレス。
容器は使用後に中性洗剤で洗って、しっかり乾かすだけで十分清潔が保てます。
冬は“温浴→急冷”の事故に注意
冬場は、温浴で血流がよくなった直後に冷気へ触れると一気に体温が下がります。
私は必ず朝~日中の暖かい時間に行い、出たらすぐ暖かいケージへ戻すと決めています。
室温差が大きい家では、浴室ではなくケージのすぐ横で行うと温度の落差を減らせます。
衛生管理は“人もカメも”の目線で
温浴後の排水は飛び散らせずに流し、家族の食器と同じシンクに置きっぱなしにしない。
容器はペット専用にして、使ったタオルも人のものと分けます。
リクガメと暮らす私たちにとっては当たり前の習慣ですが、初めてのご家族には少しだけ丁寧に説明しておくと平和です。
“温浴しなくても大丈夫”な場面と、したほうがいい合図
環境が整っていれば頻度は下げられる
庭での日光浴が十分でき、自然な湿度と隠れ家、水飲み場が常に使える環境なら、温浴頻度はぐっと下げられます。
特に初夏~初秋の気候が安定している季節は、食欲と排泄が整っているかぎり、週1回以下でも問題は起きにくいでしょう。
一方、エアコンの乾燥が効いた部屋で暮らす冬のリビングは、やっぱり温浴の出番。
環境で伸び縮みさせるのがコツです。
“今はしたほうがいい”ときのサイン
食欲が落ち気味、便が数日出ていない、尿酸がカリッと硬い、甲羅や皮膚が粉っぽい。
こうしたサインがそろったら、その週は回数を増やしてみます。
私の家では、朝の体重と前日の食べた量、当日のうんち状況をざっくりメモに残しておき、温浴の前後で変化が見えると「よし、効いてる」と実感できます。
逆に、鼻水や口呼吸などの体調不良がある時は温浴を控え、まずは保温と受診を優先します。
季節ごとのコツ|夏と冬で“同じ温浴”はしない
夏は短時間+涼しい場所でクールダウン
夏は室温が上がりやすく、水もすぐぬるくなります。
私は時間を短めにして、終わったら風通しのよい場所で一度タオルドライ。
その後はケージの温度勾配(暑いゾーンと涼しいゾーン)を使って、本人に選ばせます。
熱中症予防には、温浴よりもまず“暑すぎない環境”の見直しが先です。
冬は朝に実施、終わったら即・保温
冬は日中の一番暖かい時間帯に。
終わったら強めの保温スポットへ帰す“直行直帰”ルールが効きます。
どうしても夜しか時間が取れない日は、足湯に留める、あるいはその日は見送って翌日に回すのも立派な判断です。
体験談|最初の“バシャバシャ事件”から学んだこと
温度計とタイマーは、私の相棒
デビューの日、私は手の感覚で「たぶん32℃くらい」を作り、結果ぬるすぎて5分で水が冷たくなってしまいました。
そこから一気にテンションが下がる本亀。
反省して、翌日からはデジタル温度計とキッチンタイマーを導入。
差し湯用のポットも横に置くようにしました。
たったこれだけで“バシャバシャ事件”は起きなくなり、私の心拍数も安定。
準備の数分が、温浴の10分を楽しくしてくれます。
“できたね”を一緒に味わう時間
入浴中に水を飲んだ瞬間や、コロッと出た瞬間のあの達成感。
思わず「えらい!」と声が漏れます。
本人は“キョトン”顔ですが、その表情もまた尊い。
ケアは義務ではなく“いっしょに整える時間”だと思えたら、続ける力になります。
よくある勘違いの整理|迷ったらここに立ち返る
カルキ抜きは必須?
一般的な水道水の塩素濃度は、短時間の温浴では大きな問題になりにくいと感じています。
私はカルキ抜きは基本使わず、気になる日は半日汲み置きした水を混ぜる程度。
むしろ“温度が適切かどうか”のほうが体への影響は大きいと覚えておくと判断がブレません。
毎日しないとダメ?
「やらなきゃ」と思うほど続かなくなります。
子ガメ期や乾燥の強い季節はこまめに、調子が良い時期は回数を減らす。
必要なのは“正解の頻度”ではなく“あなたの子に合う頻度”。
カメのほうから教えてもらいましょう。
まとめ
温浴は、リクガメの体調をやさしく底上げする“シンプルで続けやすいケア”です。
便秘と脱水の予防、皮膚・甲羅の保湿、そして飲水のきっかけ作り。
狙う効果が見えていれば、やり方も頻度も迷いません。
水温は30~35℃、深さは足がつく程度、時間は10~15分を基本に。
冬は暖かい時間に、終わったらすぐ保温。
嫌がる日は足湯だけでもOK。
あなたの家の環境と、本亀の表情をヒントにしながら、“ちょうどいい温浴”を見つけていきましょう。
次の温浴でコロッと出たら、心の中で一緒にガッツポーズ、ね。