
子どもが「クワガタを飼いたい!」と言い出して、つい家に迎えたものの。
ケースから逃げ出さないか、複数を一緒にしてケンカしないか、気づいたら共食いしていた…なんてことにならないか。
虫はちょっと苦手なのに、毎日そわそわしてしまいますよね。
子どもが悲しむ顔は見たくないし、家の中で行方不明になるのも正直こわい。
でも、大丈夫です。
クワガタのトラブルは「脱走」「ケンカ」「共食い」の3つにほぼ集約されていて、それぞれ原因も対策もはっきりしています。
ここでは、虫にくわしくない親でもそのまま実践できて、子どもにも教えられる防ぎ方をまとめました。
読み終わるころには、落ち着いてケースをのぞけるようになっているはずです。
クワガタのトラブルは1ケース1匹の飼育でほとんど防げる
脱走・ケンカ・共食いという3つのトラブルは、「1つのケースに1匹だけ」を基本にして、フタのすき間をふさぐ。
この2つを守るだけで、その多くを防ぐことができます。
「もっと難しい知識がいるんじゃないの?」と身構えていた方は、ちょっと拍子抜けかもしれません。
でも本当に、ここが土台なんです。
複数を一緒にしなければケンカも共食いも起きにくくなり、フタさえしっかり閉まればケースから出ていくこともありません。
虫の名前や専門的な世話のことを完璧に覚える必要はありません。
焦らなくて大丈夫。
まずは「1匹ずつ」「フタを閉める」、この2つから始めれば、クワガタはちゃんと夏を過ごしてくれます。
ここから先で、その理由と、家庭でできる具体的な手順をひとつずつお話ししていきますね。
クワガタのトラブルが脱走とケンカと共食いに集まる理由
なぜ「脱走・ケンカ・共食い」の3つを押さえれば安心なのか。
それは、家庭で起きるクワガタのトラブルが、ほぼこの3つの形でしか出てこないからです。
しかも、どれも「クワガタの性格が悪い」から起きるわけではありません。
原因はもっとシンプルで、飼い方の環境にあります。
脱走はケースのすき間とレイアウトから起きる
クワガタは見た目より力が強く、登るのも得意な生き物です。
フタが半分しか閉まっていなかったり、フタに小さな空気穴の窓があったりすると、そこを自分でこじ開けて出ていってしまいます。
意外と多いのが、ケースの中のレイアウトが「脱走のはしご」になっているケース。
登り木やのぼり棒がフタに届く高さだったり、土を深く入れすぎていたりすると、クワガタはそれを足場にしてフタまでたどり着いてしまいます。
つまり脱走は、クワガタが特別わるいことをしているのではなく、「出られる道」がうっかり用意されているだけ。
そう考えると、対策する場所もはっきりしますよね。
ケンカは1つのケースに複数を入れることで起きる
クワガタのオスは、もともと自然の中でもエサ場やメスをめぐって争う生き物です。
だから、ひとつのケースにオスを2匹入れると、せまい空間の中で逃げ場がなく、ぶつかり合ってしまいます。
アゴではさんで投げ飛ばすこともあり、足が取れたり、ひどいときは命にかかわることも。
「広いケースなら大丈夫かな?」と思いがちですが、相手が見えている時点で安心はできません。
だからこそ、用品メーカーや専門店の飼育案内でも、そろって「1つのケースに1匹」がすすめられているんです。
種類によって気性の荒さが大きく違う
ここで知っておくと役立つのが、クワガタは種類によって性格の荒さがかなり違うということ。
同じ「クワガタ」でも、おとなしい子もいれば、けんかっ早い子もいます。
おだやかな種類でも「絶対に大丈夫」とは言い切れません。
虫の飼育に慣れていないうちは、種類に関係なく1匹ずつにしておくのが、いちばん事故を避けられる選び方です。
共食いは時期と栄養が重なったときに起きる
「共食い」と聞くと、クワガタがいつもおたがいを食べ合うこわい生き物のように感じてしまうかもしれません。
でも実際はちょっと違います。
共食いが起きやすいのは、条件が重なったときだけです。
とくに関係するのが、オスとメスを一緒に飼っているとき。
メスは卵を産むためにたくさんの栄養、とくにタンパク質を必要とします。
エサのゼリーだけでは足りなくなると、身近にいるオスを栄養源としてしまうことがあるんです。
つまり共食いは「いつでも起きる」のではなく、産卵の時期にメスのおなかがすいた状態でオスがそばにいる、という条件がそろったときに起きやすい。
逆に言えば、その条件さえつくらなければ防げる、ということでもあります。(我が家の子も「クワガタって仲間を食べちゃうの…?」と泣きそうな顔をしていましたが、理由を知るとちょっと安心したようでした)
虫が苦手な親でもできるトラブルの防ぎ方
ここからは、実際に家庭でできる具体的な手順をお話しします。
どれもむずかしい道具や知識はいりません。
子どもと一緒に「これだけは守ろうね」と確認しながら進められる内容にしました。
脱走を防ぐケース選びとレイアウトの工夫
まず見直したいのがケース選びです。
100円ショップなどで売られている、フタに小さな窓がついたタイプは、その窓をクワガタが持ち上げて出てしまうことがあります。
フタがしっかりロックできるタイプや、フタがスライド式でぴったり閉まるタイプを選ぶと、脱走のリスクはぐっと下がります。
フタとケースの間に新聞紙や不織布を一枚はさんでおくと、すき間がさらに埋まり、小さな虫が出るのも防げます。
レイアウトもポイントです。
気をつけたいのはこの3つ。
- 登り木やのぼり棒は、フタに届かない高さのものを選ぶ
- 土を入れすぎない(深く入れるとフタまでの距離が近くなる)
- エサや木は、フタの真下に「足場」ができない位置に置く
クワガタは暗くてせまい所に隠れるので、カーテンの裏、押し入れの中、家具の下、スリッパの中などをチェックしてみてください。
床にいると気づかず踏んでしまう事故もあるので、見つけるまでは家族みんなで足元に注意を。
実はうちも一度、朝起きたらケースが空っぽで青ざめたことがあります。
結局その日の夜、テレビ台のうしろでじっとしているのを子どもが見つけてくれてホッ。
それ以来、フタがカチッと鳴るまで閉めるのを徹底したら、二度と逃げられなくなりました。
ケンカを防ぐなら1匹ずつ飼うのが一番安全
ケンカ対策は、とにかくシンプルです。
オスは1つのケースに1匹だけ。
これを守れば、オス同士のぶつかり合いはまず起きません。
「子どもが何匹も捕まえてきちゃった」「もらってきて増えた」というご家庭も多いと思います。
その場合は、申し訳ない気持ちはわかりますが、ケースを頭数分だけ用意してあげてください。
ケースは大きく立派なものでなくても大丈夫。
1匹がゆったり過ごせるサイズがあれば十分です。
やってはいけないのは、「ちょっとの間だけだから」と複数をまとめて入れておくこと。
その「ちょっとの間」でケンカが起きてしまうことがあります。
共食いを防ぐにはオスとメスを一緒にしすぎない
共食いは、産卵の時期にメスが栄養を求めて起きやすい、とお伝えしました。
だから防ぎ方も、その条件をつくらないことに尽きます。
オスとメスを一緒のケースに入れっぱなしにしないこと。
観察を楽しむだけなら、最初からオスとメスを別々のケースで飼うのがいちばん安心です。
エサのゼリーは切らさないように、こまめに新しいものへ。
古くなったり、なくなったまま放っておいたりすると、メスのおなかがすいてしまいます。
「オスとメスは分ける」「エサを切らさない」、この2つで共食いのリスクはかなり下げられます。(「卵や赤ちゃんを見てみたい」という気持ちもすごくわかります。でも、虫の飼育に慣れるまでは欲ばらず、まず1匹を元気に育てきることを目標にするのがおすすめです)
子どもに伝えておきたい家庭の約束ごと
トラブルの多くは、実は大人より先に子どもの行動から始まります。
フタを閉め忘れる、何度も出して触りたがる、ケースを揺らす。
どれも悪気はないんですよね。
だからこそ、頭ごなしに叱るのではなく、「約束ごと」として一緒に決めておくとうまくいきます。
- クワガタを見たり出したりしたら、フタは必ず自分で閉める
- 触るのは1日に少しだけ(クワガタも疲れてしまうから)
- ケースは揺らしたり落としたりしない
- 逃げてしまったら、怒られないからすぐ大人に教える
叱られるのがこわくて黙っていると、発見が遅れてしまいますから。
蓋を閉める音を親子の合言葉にする
「フタを閉めてね」と言葉で言うだけだと、子どもはつい忘れます。
そこでおすすめなのが、「カチッと音がするまで閉めようね」と、音を合言葉にしてしまう方法です。
耳で確認できるルールにすると、小さな子でも「できた・できていない」が自分で分かります。
閉めたあとに「カチッて鳴った?」と一言かけるだけで、習慣になっていきますよ。
最初は毎回フタを確認していた私ですが、「カチッて鳴った?」を口ぐせにしてから、子どものほうが先に「鳴ったよ!」と報告してくれるように。
お世話を任せられる安心感が出てきて、私のそわそわもだいぶ減りました。
弱ったサインの見分け方と挟まれたときの対処
虫にくわしくないと、「これって弱ってる?それとも普通?」の判断がいちばん不安ですよね。
覚えておきたいサインをいくつか挙げておきます。
- 足先のかぎ爪が取れてきている
- 口元のブラシのような部分が出しっぱなしになっている
- 何度もひっくり返り、自分で起き上がれない
- 土にもぐらず、土の上でほとんど動かない
あわてず、エサと水分(霧吹きで少し湿らせる程度)を切らさないようにして、転んでも起き上がれるよう、つかまれる木の枝や葉を入れてあげてください。
それから、子どもが指をはさまれてしまったとき。
クワガタは驚くと強くはさみます。
無理に引っぱるとかえって食い込むので、引っぱらないこと。
クワガタごと水道の水につけると、力をゆるめて離してくれることが多いです。
安定した場所にそっと置いて待つ方法もあります。
心配なら、最初から厚手の手袋を使うと、子どもも安心して触れますね。
もし死んでしまっても外には逃がさない
精いっぱい世話をしても、クワガタには寿命があります。
お別れのときは必ず来ます。
そのとき、子どもが悲しむ姿を思って「かわいそうだから山や公園に放してあげよう」と考える方もいるかもしれません。
でも、ここは気をつけたいところ。
飼っていたクワガタや、使っていた土・木を外に出すのは避けてください。
とくに外国産のクワガタは、もともとその土地にいなかった生き物。
逃がすと、その地域の自然のバランスや、もとからいるクワガタに影響を与えてしまうおそれがあります。
環境省も「外来のカブトムシ・クワガタムシを逃がさないで・捨てないで」と長く呼びかけてきました。
亡くなってしまった場合は、お住まいの自治体のルールに沿って処理するのが基本です。
庭に埋めるのも、土に外国産の生き物の影響が残る可能性があるため、すすめられていません。
お別れのときは、子どもと一緒に「ありがとう」を伝えてあげる。
それだけで、子どもにとっては大切な学びの時間になります。(我が子のときも、小さな箱に入れてお別れをしました。さみしいけれど、命を最後まで見届けた経験は、ちゃんと残るものですね)
3つのポイントを押さえれば親子でクワガタの夏を楽しめる
最後に、大事なところをもう一度だけ整理しておきますね。
- 脱走対策…フタがしっかり閉まるケースを選び、登り木や土でフタへの足場をつくらない
- ケンカ対策…オスは1つのケースに1匹だけ。
慣れるまでは種類を問わず1匹ずつ
- 共食い対策…オスとメスは分けて飼い、エサのゼリーを切らさない
- 子どもとの約束…フタは「カチッ」と音がするまで閉める、逃げたらすぐ大人に伝える
クワガタのトラブルは「性格」ではなく「環境」から起きるもの。
だから、環境をちょっと整えてあげれば、ちゃんと防げるんです。
虫が苦手でも大丈夫。
完璧な飼い主にならなくてもいいんです。
フタを閉める、1匹ずつにする、エサを切らさない。
それだけで、クワガタは夏のあいだ、しっかり子どものそばにいてくれます。
子どもが毎朝ケースをのぞいて「今日も元気だ!」とうれしそうにする。
その姿を、お母さんお父さんも肩の力を抜いて見ていられたら、いいですよね。
今年の夏が、親子にとって小さな自信と、あたたかい思い出になりますように。
まずは今日、ケースのフタが「カチッ」と閉まっているか、一緒にのぞいてみるところから始めてみませんか。
