
リクガメって、のんびり歩いて、葉っぱをもぐもぐして、見ているだけで呼吸がゆっくりになる存在ですよね。
ところがその穏やかな世界の裏側で、静かに健康を削っていくのが「寄生虫」。
目に見えない相手ほど厄介で、しかも最初は“いつも通り”に見えてしまうから気づきにくいのです。
私はある日、うちの子の糞の匂いがいつもより強い気がして(直感センサー発動)、病院へ持ち込んだら軽い寄生虫感染が判明。
あの時の「気づけてよかった…!」の安堵は、今でも忘れられません。
この記事では、リクガメの寄生虫の“よくある正体”から、
「症状のサイン」
「早期発見のチェック方法」
「動物病院での検査と治療」
そして再感染を防ぐ生活リセット術まで、実体験ベースで丁寧にまとめます。
小難しい話はナシ。
飼い主の「今日からできる」をひとつずつ増やしていきましょう。
リクガメの寄生虫とは?
なぜ寄生虫はリクガメに感染するのか
寄生虫は自然界の“常連さん”です。
土や草、水、他個体との接触…どこにでも潜んでいます。
屋外散歩や、洗浄が不十分な野菜、導入直後の個体との同居などは感染ルートになりやすく。
ケージ内の温度・湿度が不適切でストレスが高いと、免疫力が落ちて発症しやすくなります。
つまり「出会う+守りが弱る」でスッと入り込む、そんなイメージです。
主な寄生虫の種類と特徴
消化管に住みつく線虫(いわゆるピンワーム系)は最も一般的で、栄養を横取りして体重や活力を奪います。
条虫や吸虫のように臓器へ負担をかけるタイプや、原虫(コクシジウム等)のように下痢・消化不良を起こしやすいタイプもいます。
外部寄生のダニは目や四肢の付け根に黒点のように付着し、かゆみや貧血の原因に。
種類は違っても共通するのは「最初は静かに、でも確実に体力を削る」という点です。
寄生虫感染でよく見られる症状
糞やお尻まわりに見える変化
健康な糞は、まとまりがあり、匂いは強すぎず、水様でも硬すぎもしません。
寄生虫がいると、粘液っぽくベタついたり、未消化の繊維が目立ったり、色が薄く水分が多い状態になりがちです。
白い糸くずのようなものや、いつもより強いアンモニア臭もサイン。
肛門周囲が汚れやすくなる、赤みや腫れが出る、といった外観の変化にも目を凝らしてみてください。
食欲・元気の低下
「好きな小松菜に飛びつかない」「朝の散歩コールがない」。
そんな小さな違和感が、後から思えば最初の合図だったりします。
腸内で栄養を奪われると、同じ量を食べても身にならず、だるさが出ます。
- シェルターにこもりがち
- 目に力がない
- 首がいつもより引っ込み気味
体重減少や甲羅・皮膚のツヤ低下
吸収不良が続くと、甲羅の艶が落ち、皮膚が乾いた紙のように見えることがあります。
抱き上げた時の“ずしっ”が“すっ”に変わったら要注意。
月に一度の体重記録は、未来の自分を助ける最高のエビデンスになります。
外部寄生虫のサイン
- 目の縁や脚の付け根
- 甲羅の隙間をこすりつける仕草が増える
- 黒い点が動く
- 流血やかさぶたが出る
犬猫用の外用薬を流用するのは危険なので、必ず爬虫類に詳しい病院で相談を。
早期発見のためのチェックポイント
“毎日の観察”を仕組みにする
観察は気合いでは続きません。
- 朝は給餌量と食べ残し
- 夜は糞と行動メモ
- 週末は体重と写真
私はスマホのメモにテンプレを作って、絵文字で体調をスナップショット化しています(青〇:元気/黄色〇:少し不調/赤〇:要受診)。
糞便検査のベストプラクティス
新鮮な糞を清潔な袋や容器に入れ、乾燥しないように密封して当日中に病院へ。
難しければ冷蔵庫で一時保管(24時間以内が目安)。
砂や床材が混ざると判定が難しくなるので、排泄直後に回収できるよう、ペットシーツやタイルを“トイレスポット”に敷いておくと回収が楽です。
導入時と季節の変わり目、年1~2回はルーチンで提出すると、早期発見率が一気に上がります。
「受診の目安」を決めておく
- 48時間以上の食欲不振
- 急な体重の5%超減少
- 水様便や血便
- 嘔吐に似た咳き込み
- 明らかな脱水(目が落ちくぼむ・皮膚が戻りにくい)
家の中で様子を見る“猶予”をあらかじめ決めておくと、判断に迷いません。
寄生虫が見つかったときの対処法
自己判断で薬を使わない理由
「ネットで見た駆虫薬」を試したくなる気持ち、わかります。
でも種類が違えば薬も用量も変わり、誤用は肝臓や腎臓に負担をかけます。
寄生虫は“敵の顔”を見てから戦うのが鉄則。
検査→同定→処方、この順番をすっ飛ばさないことが結果的に一番早い回復への近道です。
動物病院での検査と治療の流れ
診察では問診と視診のあと、糞便検査(浮遊法・直接法など)で虫卵や原虫を確認します。
必要に応じて血液検査や画像検査が行われ、種類と重症度に合わせて駆虫薬や支持療法(保温、補液、栄養管理)が組み合わされます。
投薬は一度で終わらないことが多く、数週間~数か月かけて“卵→成虫”のライフサイクルを断ち切ります。
途中で元気になっても勝手に中断しないこと。
ここでの気の緩みが再燃の一番の原因です。
治療期間の暮らし方と再感染ブロック
ケージは“週1総入れ替え+毎日スポット清掃”へギアアップ。
食器や水入れは熱めのお湯と中性洗剤で物理洗浄を基本に、消毒は必ず動物を外に出してから行い、十分にすすいで乾燥させます。
床材は使い捨て系に切り替えると管理が楽。
トングやスポンジも“治療用”に分けると交差汚染を防げます。
多頭飼育なら一時的に完全隔離を。
導入直後の個体は理想的には30日以上の隔離観察が安心です。
寄生虫を予防するための飼育習慣
清潔のコアは「乾燥・換気・温度」
寄生虫は湿った環境が大好きです。
床材は湿りすぎると温床になるため、時々かき混ぜて空気を入れ、表面だけでなく中層までしっかり乾かすことが大切。
ケージのレイアウトも、隅々まで空気が通るように配置を工夫します。
ファンや小型の換気装置を活用するのも効果的です。
また、温度が低すぎると消化機能が落ち、腸の動きが鈍って悪玉菌や寄生虫が優勢になりやすくなります。
温湿度計を常設し、日中・夜間の変動を把握しながら適温域をキープすることは、派手さはないけれど確実に効く“地味で強い”予防策です。
食事と水の衛生を“仕組み化”
葉物野菜は流水で表面の汚れや付着物を落とし、土付きの根菜や野草は特に念入りに。
水に浸けてから流水ですすぐと、虫や卵をより確実に除去できます。
野草は採取場所の安全性を最優先にし、農薬や排気ガスの心配がない場所を選びます。
できれば家庭菜園や信頼できる無農薬の入手先を確保しておくと安心です。
水は毎日交換し、器は毎回洗浄。
熱めのお湯で流すだけでも衛生度は格段に上がります。
こうした習慣をルーティン化すれば、口から入るリスクを大きく減らせます。
「サルモネラ」との違いを知っておく
時々質問を受けますが、サルモネラは“細菌”であり、寄生虫とは全く異なる生物です。
どちらも衛生管理が重要という点は共通していますが、感染経路や症状、予防や対処の方法が異なります。
寄生虫は駆虫薬や環境改善が主な対処になりますが、サルモネラは抗菌薬の投与や徹底した除菌が必要になるケースもあります。
この違いを理解しておくと、万一の際に判断や行動がブレず、迅速で的確な対応が可能になります。
ケーススタディ:うちの子に起きた“小さな違和感”
最初のサインは「匂い」だった
ある朝、いつもより糞の匂いが強い気がしました。
色はそこまで変ではない。
けれど、私の鼻が「いつもと違う」と言う。
念のため当日中に糞便検査へ。
結果は軽度の寄生虫。
大ごとになる前に見つけられて、胸の奥で固まっていた不安がスッと溶けました。
治療中にやってよかった3つのこと
ひとつは、床材を全面ペーパー管理に変えたこと。
掃除が一瞬で終わり、観察もラク。
ふたつめは、給餌量と体重を毎日同じ時間に記録したこと。
回復の上向きカーブが“見える化”されて勇気が出ました。
みっつめは、完治宣言まで家族に“ナデナデ解禁”を待ってもらったこと。
これ、再感染防止に地味に効きます。
よくある誤解と正しい知識
「虫が見えない=いない」ではない
糞に虫体が見えなくても、顕微鏡で卵が見つかることは珍しくありません。
外観や匂いだけで安心しきってしまうのは危険です。
逆に、白い糸のようなものが実は植物繊維だった、というケースもあるので、見た目だけで「寄生虫だ!」と早合点するのも誤解のもと。
つまり、外見上の判断はあくまできっかけに過ぎず、確定診断は必ず顕微鏡検査などの“科学的な答え合わせ”が必要です。
飼い主の経験値や勘も大切ですが、それを裏付ける検査データがあってこそ正しい対応ができます。
「自然に任せれば治る」は危険
軽症で自力で持ち直すこともゼロではありませんが、成長期や高齢個体では寄生虫による栄養不足や臓器負担が一気に進行し、あっという間に体力を奪われます。
「様子を見る」と「放置する」は似て非なるもの。
特に発見が遅れれば遅れるほど回復に時間もコストもかかり、場合によっては命に関わります。
迷った時点で、その迷っている時間ごと病院に持ち込むという行動習慣を身につけることが、結果的にリスクを最小限に抑える一番の近道です。
まとめ
寄生虫は“見えない敵”だから怖い。
でも見えないからこそ、毎日の観察、定期の検査、そして環境づくりという“見える行動”で守れます。
たった一回のメモ、たった一度の検査提出、たった一回の床材総入れ替えが、未来の「助かった」に変わることを、私は身をもって知りました。
あなたのカメさんの今日の一歩が、半年後の軽やかな足取りにつながります。
違和感センサーがピピッと鳴ったら、その直感を信じて一歩。
大丈夫、間に合います。
