家族だけで迎える初盆(新盆)は、故人との思い出を静かに振り返る大切な時間です。
形式ばった大きな法要ではないからこそ、一人ひとりの気持ちや心づかいがより伝わりやすい場面でもあります。
あまり堅苦しく考える必要はありませんが、それでも最低限のマナーや服装に配慮することで、穏やかで心温まるひとときを過ごすことができます。
この記事では、
「家族だけで行う初盆にふさわしい服装の選び方や香典の金額
「準備しておきたいもの」
などについて、初めての方でもわかりやすいようにやさしい言葉でまとめました。
これを読めば、「何を準備したらいいの?」「どこまで気をつければいいの?」という不安も解消されるはずです。
初盆という特別な時間を、心から穏やかに過ごすためのお手伝いができれば幸いです。
初盆の服装|家族だけのときに気をつけたいこと
初盆は、故人を偲ぶために初めて迎えるお盆であり、ご遺族にとってとても大切な行事です。
家族だけで静かに行う場合でも、服装にはある程度の気遣いが必要です。
「家族しかいないから」と油断せず、TPOに応じた装いを選ぶことが、礼儀や思いやりの気持ちとして表れます。
特に最近では、「平服で」と言われるケースも増えてきましたが、どこまでカジュアルにしてよいのか迷う方も多いはず。
この記事では、そうした疑問に答えながら、家族だけの場面でも失礼のない服装選びのコツを紹介していきます。
正装と平服ってどう違う?
正装(喪服・礼服)
フォーマルな場面ではやっぱり定番。
喪服には和装と洋装がありますが、家族だけの初盆であれば、洋装のブラックフォーマルが一般的です。
男性は黒のスーツに白いシャツ、黒のネクタイを着用し、女性は黒のワンピースやスーツに加えて、黒のストッキングとパンプスが基本スタイル。
特に、お坊さんを招いて読経をお願いする場合は、きちんとした服装で気持ちを整える意味でも喪服や礼服が安心です。
平服でOKと書いてあったら?
案内状などに「平服でお越しください」と書かれていても、完全にカジュアルでいいというわけではありません。
平服とは“フォーマルほど堅くないが、節度を持った装い”を意味します。
Tシャツやジーンズ、スニーカーなどラフすぎる格好は避け、黒や紺、グレーといった落ち着いた色味の洋服を選ぶのがポイント。
たとえば、
- 男性ならジャケットにシャツ
- 女性ならブラウスとスカート、または落ち着いたワンピース
家族だけであっても「気持ちを服で表す」という意識を大切にしたいですね。
男性・女性それぞれの服装ポイント
男性の場合
- 白の無地シャツ(襟付きでアイロンがかかっているとより清潔感が出ます)
- 黒・紺・グレーのスラックス(きれいめなズボンで、センタープレスのあるタイプが望ましい)
- 黒の靴下と革靴(靴も事前に磨いておくと好印象)
- ジャケットを羽織るとよりきちんと感が出ますが、暑い時期はシャツだけでも可
女性の場合
- 黒や紺のワンピースやスーツ(ノースリーブは避け、袖のあるデザインがおすすめ)
- 白いブラウス+暗めのスカートorパンツ(スカートは膝が隠れる長さがベター)
- 黒のストッキングとパンプス(ヒールは低めで歩きやすいものを選ぶと安心)
- アクセサリーは控えめに。
- パールのネックレスやイヤリングなら上品な印象になります。
- ナチュラルメイクで清潔感を大切にしましょう
子どもの初盆の服装はどうする?制服がないときの対処法も紹介
子どもも初盆の場にふさわしい服装で参加させてあげたいものです。
家族だけの集まりとはいえ、きちんとした装いをすることで、故人への敬意や周囲への配慮を示すことができます。
特に成長途中の子どもは服のサイズが合わなかったり、急に必要になることも多いので、余裕をもって準備しておくと安心です。
制服があるなら
学校の制服があれば、それが一番ふさわしく、無難な選択です。
制服は学生にとっての正装ですので、着るだけで自然と礼儀正しい印象を与えてくれます。
特に制服は、親戚が集まる場でも安心して着せられる定番の装いであり、見た目にも整っていて好感度が高いです。
さらに、白いシャツにアイロンをかけてシワを伸ばしておいたり、ズボンやスカートのラインを整えることで、より清潔感のある印象になります。
靴も前日に磨いておくと、細かな部分まで気配りができていることが伝わります。
また、靴下の色にも注意し、できれば黒か紺など落ち着いた色味で統一するとバランスがとれます。
全体として、派手さを抑えた落ち着いた制服スタイルが、初盆という場にふさわしい装いとなります。
制服がないときは?
白いシャツやブラウスに、黒や紺、グレーなど落ち着いた色合いのズボンやスカートを組み合わせましょう。
素材は綿やポリエステルなどシワになりにくく、見た目にも清潔感があるものが理想的です。
ズボンやスカートは、丈が短すぎず、体に合ったものを選びましょう。
靴下や靴も黒で統一すると、よりフォーマルな印象になります。
靴は革靴やローファーなど、シンプルで履き慣れたものがベスト。
運動靴やサンダルは避け、きちんと感のあるデザインを心がけましょう。
可能であれば、カーディガンやジャケットを羽織るときちんとした印象がアップします。
肌寒い時期には防寒にもなり、逆に夏場は半袖のシャツでも襟付きであれば清潔感が保てます。
また、髪型も整えておくと全体的に好印象につながります。
男の子であれば寝ぐせを直す、女の子であればまとめ髪にするなど、ほんのひと手間が見た目をぐっと引き締めてくれます。
全体としては、落ち着いた色合いと清潔感を意識した装いにすることで、制服がなくても十分に礼儀正しい印象を与えることができます。
避けたい服装
キャラクターものや派手な柄、蛍光色の服などは避けましょう。
たとえば
- アニメやゲームのキャラクターが大きくデザインされたTシャツ
- ラメ入りや蛍光色のトップス
- 目立つロゴや文字が印刷された服
なるべく無地のアイテムで、黒・紺・グレーなどの落ち着いたトーンの服装を心がけましょう。
デザインもシンプルで上品なものが好ましく、余計な装飾のないものが望ましいです。
また、サンダルやスポーツシューズも控えるのが無難です。
ビーチサンダルやクロックス、カラフルなスニーカーなどはカジュアルすぎて礼を欠く印象になります。
黒や濃い色のローファーや革靴など、落ち着きがあり歩きやすい靴を選びましょう。
さらに、服のサイズ感や状態にも気をつけたいところです。
シワだらけの服や、サイズが合っていない服はだらしない印象を与えがちです。
前日にアイロンをかける、試着して着心地を確認するなど、ちょっとした準備で全体の印象がぐっと良くなります。
親としては、子どもが着慣れない服で疲れてしまわないよう、素材や着心地にも配慮しつつ、きちんと感を大切にした装いを選んであげましょう。
初盆の香典と準備物|家族だけでも気をつけたいマナー
初盆は、亡くなった方を初めて迎えるお盆ということで、特別な意味を持つ行事です。
たとえ身内だけで行う場合でも、心を込めた準備と最低限のマナーを守ることで、故人への想いをしっかりと形にすることができます。
家族だけだからといって気を抜かず、香典の金額や準備物、ふるまいなどに注意を払いましょう。
特に香典に関しては、「家族だけだからいらないのでは?」と迷う人も多いですが、基本的には持参するのがマナーです。
また、初盆の準備に必要な道具や飾りは地域によって異なることもあるため、事前に確認しておくと安心です。
初めて準備する方でも困らないよう、ここでは金額の目安や準備リストも詳しく紹介していきます。
しっかりとした準備をしておくことで、家族の心がひとつになり、穏やかで温かな時間を過ごせるはずです。
初盆の香典の金額は?家族構成別の目安
家族だけの初盆でも、香典は持っていくのがマナーです。
形式ばらずに行われることが多いとはいえ、こうした場ではやはり気遣いが大切。
香典は「故人への感謝と供養の気持ち」を表すものであり、身内同士であってもその想いを形にするという意味で用意するのが望ましいです。
中には「香典は要りません」とされる場合もありますが、基本的には持参する前提で考えておくと安心です。
また、金額は贈る相手との関係性や、地域の風習によっても違いがあります。
一般的な相場を把握しておけば、「多すぎたかな?」「少なかったかも?」といった心配も少なくなります。
香典の相場(目安)
- 【両親・兄弟姉妹・子ども】
10,000~30,000円くらいが目安。関係が近いほど金額もやや高めにする傾向があります。 - 【祖父母・孫】
5,000~10,000円くらい。気持ちを込めつつ、無理のない範囲で。 - 【その他の親戚(いとこや叔父叔母など)】
5,000円前後が一般的です。
※なお、初盆後に食事の席が設けられる場合は、1人あたり3,000~10,000円程度を追加して包むのがマナーとされています。
会食の有無を事前に確認しておくと、金額設定がしやすくなります。
初盆の準備チェックリスト|必要なものを事前に確認
初盆を迎えるにあたっては、事前の準備がとても大切です。
家族だけの小規模な法要であっても、心を込めて準備を進めることで、故人を丁寧にお迎えすることができます。
必要なものは地域の風習や家庭によって若干異なることもありますが、以下に基本的なチェックリストを紹介します。
あらかじめ準備しておけば、当日慌てることもありません。
精霊棚(しょうりょうだな)
仏壇がある場合はその前に設置するのが一般的です。
仏壇がないご家庭では、小さなテーブルや台を代用しても構いません。
白い布をかけ、お供え物や写真、故人ゆかりの品などを飾ることで、心を込めた祭壇になります。
盆提灯
故人の霊が迷わず帰ってこられるよう、目印として飾る灯りです。
玄関先や仏壇の両脇に配置するのが定番で、昼間でも点灯させておく場合もあります。
電気式のものもあり、現代の生活スタイルにも合うよう工夫されています。
お供え物
季節の果物や新鮮な野菜、お団子、お菓子などを用意します。
特に忘れてはならないのが、きゅうりとナスを使った精霊馬(しょうりょううま)。
割りばしなどで足をつけて、きゅうりの馬(早く来てもらう)とナスの牛(ゆっくり帰ってもらう)を作ります。
お花(供花)
仏壇に供えるものと、玄関や祭壇を飾るものとで一対ずつ用意するのが理想です。
色は白を基調とした落ち着いた花が一般的ですが、故人が好きだった花を取り入れるのもよいでしょう。
生花だけでなく、近年はプリザーブドフラワーや造花を使う家庭も増えています。
線香とロウソク
どちらも新しいものを用意し、香りが強すぎないものを選ぶと良いでしょう。
線香立てやロウソク立てがない場合は、仏具店などであらかじめ購入しておくのが安心です。
迎え火・送り火用の松材や火種
地域によっては、玄関先などで火を焚いてご先祖様を迎える「迎え火」やお見送りする「送り火」の風習があります。
マンションや集合住宅では難しい場合もあるので、代替として盆提灯を灯す家庭も多いです。
初盆で避けたい服装・NGマナー集
初盆は故人を偲ぶ厳かな場であり、たとえ家族だけの集まりであっても気を抜かずに配慮したいところです。
ここでは、避けるべき服装やふるまいについて、代表的な例を挙げてご紹介します。
うっかりマナー違反をしてしまわないよう、事前に確認しておくことが大切です。
ラフすぎる格好(Tシャツ、ジーンズ、スニーカーなど)
「平服でお越しください」と言われても、カジュアルすぎる服装は避けましょう。
ここでいう“平服”は、いわゆる普段着ではなく、“あまり堅くないけれど節度ある装い”を意味します。
- Tシャツやジーンズ
- スウェット
- スポーツウェア
特にロゴ入りや派手なデザインのもの、ビビッドなカラーのアイテムは不適切です。
例えば、大きな英字やブランドロゴ、キャラクターのイラストが入っている服などは避けるようにしましょう。
また、派手な装飾やフリル、光沢のある素材も控えたほうが無難です。
代わりに、黒・紺・グレー・ベージュなど、なるべく落ち着いた色味でシンプルなデザインの服を選び、清潔感のある服装を心がけてください。
服のシワや汚れにも注意し、アイロンがけやコーディネートの準備も前日までに済ませておくと安心です。
派手な柄や明るすぎる色の服
お盆は静かに故人を迎える行事のため、
- 赤
- ピンク
- 黄色
これらの明るく鮮やかな色は祝い事に用いられることが多く、初盆のように厳粛な場にはそぐわない印象を与えてしまいます。
たとえ子どもであっても、できる限り落ち着いた雰囲気の服を選ぶよう心がけたいところです。
また、柄物についても同様で、大きな花柄やカラフルなストライプ、ポップなドット柄などは避け、無地または控えめなデザインを選びましょう。
服の素材や光沢感にも注意が必要です。
光を反射するようなサテン地やラメ入りの生地などは控え、マットで落ち着いた印象の素材を選ぶのが無難です。
黒や紺、グレーといった落ち着いた色調が望まれますが、濃いベージュや深い緑、茶系などでも問題ありません。
大切なのは、全体的に静かで落ち着いた雰囲気を醸し出すこと。
服装ひとつで印象が大きく変わるからこそ、慎重に選びたいものです。
濃いメイクやキラキラしたアクセサリー
目立ちすぎるアイメイクや口紅、華美なネイル、大きめのアクセサリーは避けましょう。
アイシャドウの色が濃すぎたり、グリッター入りだったりすると、静かな場には不釣り合いに見えてしまいます。
リップも明るすぎる赤や濃いピンクは避け、ベージュ系や自然な血色のカラーを選ぶと安心です。
ノーメイクでなくても構いませんが、ナチュラルで清楚な印象を大切にしましょう。
メイクは「薄くても整っている」ことを意識すると、控えめで上品な印象になります。
ネイルも無色かベージュ系のシンプルなものがベストです。
アクセサリーはパールなど控えめなものを選ぶのが無難です。
大きくて揺れるイヤリングや、キラキラした装飾の多いアクセサリーは避け、小ぶりで落ち着いたデザインにすると全体のバランスも整います。
ごちそうすぎる食事(すき焼きやお寿司など、お祝いっぽいもの)
お盆の食事は、あくまでも故人を偲ぶための場と心得ましょう。
そのため、華やかで豪華すぎる料理や、いわゆるごちそうとされるようなメニューは控えるのがマナーです。
見た目や内容が華やかすぎる料理は、祝いの席のような印象を与えてしまい、初盆の厳かな雰囲気にふさわしくありません。
できるだけ控えめで、落ち着いた雰囲気の食事を意識することが大切です。
たとえば、季節の野菜を中心に使った煮物や和え物、汁物といった、家庭的で滋味深い献立が適しています。
特に、肉や魚を使わない精進料理は、昔からお盆や法要の場でよく取り入れられてきました。
精進料理は「生き物の命をいただかない」という仏教の教えに基づいた料理であり、故人への敬意を示す意味でも非常に適したスタイルです。
また、豪華さを控えたとしても、食事の際には配膳の順序や盛り付け、器の選び方など、細部に心配りをすることで、もてなしの気持ちが伝わります。
冷たい麦茶や温かい緑茶を添えるなど、季節に合わせた心遣いもあるとさらに良いでしょう。
全体的には、豪華な料理よりも「落ち着き」と「感謝の気持ち」を大切にした家庭的な食卓を整えることで、故人とのつながりを感じられる温かな時間になります。
まとめ|家族だけの初盆でも心を込めて丁寧に準備を
初盆は、大切な人を初めて迎えるお盆であり、故人とのつながりを改めて感じる特別な節目です。
形式張った大きな法要とは異なり、家族だけで静かに行われるケースが多いため、一見シンプルな催しに見えるかもしれません。
しかし、だからこそ一つひとつの所作や準備に心を込めることがとても大切です。
たとえ親しい身内だけの小さな集まりであっても、服装や香典、供え物、お花など細やかな部分にまで気を配ることで、故人に対する敬意や感謝の気持ちが自然と表れます。
また、そうした丁寧な気遣いは、ご家族の間での思いやりや絆を再確認するきっかけにもなります。
派手な演出や過剰な飾り付けは必要ありません。
むしろ、清潔で落ち着いた雰囲気のなかで行う、シンプルであたたかな準備こそが心に残る初盆の時間となるでしょう。
料理や飾りも無理をせず、できる範囲で心を込めて用意すれば、それだけで十分です。
準備のひとつひとつに心を込め、故人を偲ぶ時間をゆったりと穏やかに過ごすことが、家族全員にとって深い癒しとなり、今後の支えにもなる大切なひとときになるはずです。