先日、友人から「会社から障害者手帳を提出してくれって、しつこく催促されてこまってる」っていう話を聞きました。
そういう私の妻も精神の障害者手帳(2級)を持っているんだけど、会社には妻が「自分が障害者だってバレるのが嫌」っていう理由で、精神障害者の手帳を持っていることは言ってません。
友人の場合は、直接会社に「自分で障害者手帳を持ってることを話した」って訳じゃなくって、人づてに聞いて会社の上司が知ったみたいなんです。
でもそもそも、会社に障害者手帳って提出しなきゃいけないものなのなんでしょうか?
そもそも会社に障害者であることを知らせていないことで、何か妻にとって不利益とか、あとあと面倒なことになったりしないんでしょうか?
障害者手帳って会社に提出しなきゃいけないものなの?
まず、障害者手帳うんぬんよりも、「自分が障害者であること」って会社には伝えなきゃいけないものなんでしょうか?義務的なものがあるんでしょうか?
正直、妻は「自分が精神障害者」であることを、できるだけ他人には知られたくないって思ってるし、会社にも知られたくないって思ってます。
知られることによって、周りの人の態度が変わってしまったり、会社の私への評価に影響したりするんじゃないかって心配なんですよね。
障害者手帳を持ってることを会社に伝えないことって違法なの?
まず、会社に自分が障害者手帳を持っていることをあらかじめ伝えていなかったら、違法行為になっちゃうんでしょうか?
っていうか、そもそも障害者手帳って何なんでしょう?
「障害者の自立とか社会参加を手助けするための公的な障害者福祉に関係するサービスを受けることができる利用資格を示す証明書」
のことです。
そして、その「証明書」を会社に提出しなかったからといって、何か違法行為になってしまう…なんてことはありません。
障害者手帳によって福祉サービスを受けているんだから会社への報告は義務なの?
中には「公的サービスを受けているんだから、自分が障害者だって職場に知らせるのは義務だよ」っていう人もいます。
でも、公的サービスを受けていることは個人の問題で、別に会社には関係のないことです。
「その障害のせいで、仕事に何かしらの不都合がある」っていう場合には、会社に自分が障害者だっていうことを伝えるべきだとは思います。
でも、伝えなかったからと言って公的に何か問題がある訳じゃありません。
障害者手帳は公的に証明された証明書
前述したように、障害者手帳っていうのは「公的に障害が認められた(福祉サービスを受けられる)証明書」です。
ただ、この「公的に認められた」っていうところがポイントで、障害の程度によっては、認められない障害もあります。
この認められてない障害も会社に言わないといけないかっていうと、そんなことはありませんよね。
先ほども言ったように、仕事上なにか問題があるようなことなら言うべきでしょう。
でもそうじゃない時には、例えば極端なはなし「私って人よりも汗っかきなんです」って会社に言わないといけない、っていうのと同じだと思うんです。
実際に私も、若い時に「網膜剥離(もうまくはくり)」で、片目を失明しちゃってて、右目が全く見えません。
でも、「障害者としての条件」を満たしていない(両目での視力や視野の広さ)から、公的には障害者としては認められていません。
仕事をする上で、この障害というか特性は全く問題ないので、会社には言ってませんし、だからと言って何がどうなることもありませんよね。
ちょっと話が違う方向に行っちゃいましたね。
でも要は「障害者手帳はあくまでも、障害者の条件を満たしてるから、それをサポートするサービスを受ける為のパスポート」
なので、別に仕事上問題がないのなら会社に言う義務もないです。
それに自分が言わない限り、あとは年末に会社に提出する「年末調整の障害者控除」をつけない限り、会社にもその事実が伝わることはありません。
会社に障害者と伝わらないための方法については「障害者控除で会社にばれない劇的な方法 年末調整を自分でしても会社にばれる!」に詳しく書いていますので、参考にされてみてくださいね。
障害者手帳を提出すると会社にはどんなメリットがあるの?
では、何で友人の勤める会社は、友人にしつこく「障害者手帳の提出」を催促してくるんでしょう?
それは、会社側に、障害者手帳を提出してもらうことにメリットがあるからなんです。
障害者手帳を提出してもらうことの会社側のメリット
この会社側のメリットは大きく2つあります。
障害者手帳提出の会社側のメリット①一定数の障害者を雇用する義務がある
まず1つ目は、「障害者雇用促進法」というのがあって会社は、その規模によって一定数の障害者を雇用しなきゃいけない、っていう風に決められているんです。
そして、その「一定数の雇用」を下まわってしまっている場合には、「罰金」的なものを国に収めなきゃいけないんです。
なので「従業員が障害者手帳を持っている」ってわかったら、障害者を雇用していると証明するために「障害者手帳の提出」を求めてくるんですね。
障害者手帳提出の会社側のメリット②障害者を雇用すると助成金がある
決められた一定数の障害者を雇用しないとお金を払わなきゃいけないのとは逆に、障害者を雇用すると会社は「助成金」を受け取ることができるんです。
その金額も数十万円から100万円以上にもなるので「障害者手帳を提出してください」って催促もされますよね。
障害者手帳を会社に提出することで自分のメリットやデメリットは?
会社にとては、障害者を雇用しないと罰金的なものを払わなきゃいけなくなったり、雇用すると結構な額の助成金も受けられるメリットがあることはわかりました。
会社に障害者手帳を提出するメリット
では、個人的にはどんなメリットがあるんでしょうか?
障害者手帳提出のメリット①年末調整で障害者控除が受けられる
障害者手帳を持っていると「障害者控除」と言って、年末になると会社に提出する年末調整で、所得税の控除を受けることができます。
それに、この控除された金額をもとに市県民税は計算されるので、翌年度の市県民税も控除されることになりますよね。
障害者手帳提出のメリット②障害が重くなった時に不利益を受けにくい
もし、会社に障害のことを伝えていないと、何かしらの理由で障害が重くなってしまって、仕事に影響がでてきてしまった場合にも。
そんなときにも、あなたが不利益を受けにくい(会社から憂慮してもらいやすかったり、それを理由に解雇されたりしない)っていうメリットがあります。
逆に伝えてない場合には、障害が原因で仕事がちゃんとできなくなったっていうことで、配置転換や減給、最悪の場合は解雇なんてことにもなっちゃます。
会社に障害者手帳を提出するデメリット
メリットの次に、障碍者手帳を会社に提出することのデメリットを見てみましょう!
障害者手帳提出のデメリット①知られたくなかった障害がばれる
ひと昔前に比べると、障害者への理解も進んできてるし「障害者だから」っていうことで、理不尽な不利益を受けたりなんてことはなくなってきてます。
でも「やっぱり障害のことは人には知られたくない」って思う人は多いです。
個人情報のことが厳しく言われるようになって、障害者だってことは思いっきりプライバシー的なことですよね。
なので、ちゃんとした会社なら会社に障害者手帳を提出しても、他の人に知られてしまうこともないんでしょうけど、小さな会社だったりするとそういったこともないとは限りませんもんね。
障害者手帳提出のデメリット②障害者枠として扱われると…
会社が従業員を雇用するときに「障害者枠」あります。
ハローワークに行って相談すると、一般の求人枠とは別に、この障害者枠で優遇してもらって就職しやすくしてもらうことができるものです。
ただ、この枠で採用されると、
- 一般よりも給料がすごく安くなってしまったり
- 正社員にはなれずに昇給もなかったり
- あっても普通よりも少ない
会社は補助金を貰えるのに、支払う給料は安いとか、どうなんよ…って思っちゃいますよね。
障害者枠として採用されてなくって、ちゃんと仕事もできてれば、普通はこんなことはないんでしょうけど、可能性としてありえることです。
健常者から障害者になったら給与は下がる?障害者手帳を提示しなければ…?
障害者枠で雇われている人の平成30年5月の平均のお給料は
- 身体障害者 21万5千円
- 知的障害者 11万7千円
- 精神障害者 12万5千円
- 発達障害者 12万7千円
<引用元>
「厚生労働省 平成30年度障害者雇用実態調査の結果を公表します」
それに対して、健常者のお給料の平均は30万といわれているそうなので、やはり比べるとお給料は下がるという結果になっていますね。
ですがこれは、
- 健常者と同じ時間働けないからだったり(勤務時間を短くしている)
- パートや派遣といった非正規雇用で雇用されていたり
- 仕事内容に制限が出来てしまったり
勤務時間が短かったり、非正規雇用だったりする場合、障害者枠での雇用に限らず正規雇用に比べてお給料は低いですよね?
なので、障害者の人はお給料が安いと言われているんです。
では、健常者から障害者になった場合も、いままで通りのお給料がもらえなくなるのでしょうか?
これについては、今までの仕事内容が難しいということであれば。
勤務内容や雇用契約の見直しをすることになるでしょうから、お給料も変わってしまう可能性があります。
障害があっても、いままでの仕事を問題なくこなせるなら、通常であればお給料は下がりません!
それに、「障害者だから」という理由でお給料を下げるのは「障害者雇用促進法」で禁止されているんですよ。
<参照情報>
「厚生労働省 改正障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A 」
なので、「私の職場では、障害者枠採用者は加配部員とされていて、給料は正式採用者と同一です。」という人も自裁にいるようです。
でも、勤務時間の短縮や仕事内容の変更などの配慮が必要ならば、雇用契約の変更も考えられるので、お給料は下がってしまうでしょう。
けれど、自分に合わない環境では長く働けませんし、障害者手帳を提示しておけば通院が必要になった時も配慮してもらいやすいです。
このように、仕事上なんらかの影響がでるようであれば、障害者手帳を提示していたほうが自分にとってメリットも考えられますよね。
ということで、いままでの仕事がなんの問題もなくこなせるようでしたら障害者手帳は提示けなくてもいいでしょう。
提示しなければ一般の人と同じ仕事量で同じお給料をもらえるはずですよ。
障害者手帳の提示の仕方!職場には誰にどう提示すればいいの?
障害者手帳を提示するにあたり、多くの人はまずは直属の上司に伝えているようです。
そのときに、すべてのやり取りが残る「メール」を使って伝えるのがおすすめです。
私も退職などの相談をしないといけなくなったとき。
不安だったり緊張してしまうことから、まずはメールで上司に伝えました。
メールでは、自分の状態を軽く伝えて、「ご都合のよろしい時にご相談のお時間を頂きたくご連絡いたしました。」ってな感じで面談する時間を調節してもらいましたよ。
また、面談時間を取ってもらって話すときは、医師の診断書などの資料を持参しておくとよさそうですね。
加えて、
- 自分の健康状態
- 配慮してもらいたいこと
- 質問されるであろうこと
- 聞いておきたいこと
いろいろと前もって考えていても、実際に話をしていると「伝えたいこと、聞きたいこと」が頭から抜けていることがよくあるんですよね。
私もその1人です。
そして、障害者手帳の提示ですが、最終的には人事部に報告するようになる職場が多いようです。
いろいろな書類の管理や人材の管理をしているのは人事部(なければ総務部など)ですもんね。
なので、人事部の人に「障害者手帳を取得したので扶養などの申告書を書き換えたい」と伝えるとスムーズにいくと思います。
分からなければ、上司に相談したときに提示の仕方を聞いておくのもいいでしょう。
障害者手帳を会社に提出することのまとめ
障害者手帳を会社に提出することについて見てきました。
確かに、社会的な障害者に対する見方とか、差別的なものはだいぶんなくなってきてると思います。
でも、個人的な人間関係だったり、自分の気持ち的なもので、まだまだ「人には知られたくない」って思う人はたくさんいます。
そういう風に「クローズ就労」するときには、いくつかの注意点があります。
そのような「クローズ就労の注意点」を
「障害者控除を会社に知られたくない!クローズで働くときの注意点」
に詳しくまとめていますんで、ぜひ参考にしてくださいね。
メリットもあればデメリットもあるので、「自分はどうしたいんだろう」って考える機会にしてもらえると嬉しいです。